2008.6.26(木)  第33回 日本睡眠学会学術集会 発表抄録
整形外科医が考える睡眠姿勢・・・枕調節法を用いて・・・

【はじめに】
整形外科的に至的睡眠姿勢を考えるときに重要なことは、静的睡眠姿勢と、動的睡眠姿勢つまり寝返りの両方の条件を考えることである。我々はこれまでに、枕調節法SSS法を用いて、寝返りを促す仰臥位および側臥位に適合する枕の高さを決定し、SASの症状改善や頚椎疾患の頚部症状や睡眠障害の改善を検証してきた。今回は、この臨床評価の改善が得られた症例における静的睡眠姿勢を、MRIを用いて評価した。

【対象】
頚部症状、睡眠障害を訴えて来院し、頚椎の動態MRIを撮影した177例、男性62例、女性115例、年齢18~83歳、平均52.9歳を対象とした。仰臥位で枕のない状態と至適高さの枕における頚部脊柱管および頚髄の状態を評価した。

【方法】
MRIT2強調画像矢状断で、解剖学的に脊柱管の広い第3頚椎椎体レベル(C3)と、各症例の病変部である最狭窄部(N)の脊柱管径と、同部における脊髄径を計測し、比較した。背柱管を狭窄する前方要素として椎間板のbulding、herniation、骨棘、後方要素として黄色靱帯の肥厚、骨性狭窄などがある。

【結果】
脊柱管径は、枕のない状態でC3 11.35mm、N 8.71mmが、至適枕でC3 11.56mm、N 9.40mmと拡大した。脊髄径は、枕のない状態でC3 6.48mm、N 5.65mmが、至適枕でC3 6.59mm、N 5.85mmと拡大した。

【考察】
MRIを用いて静的睡眠姿勢を評価した。至適枕において、くも膜下スペースが椎体各レベルで均等に拡大する傾向が見られ、頚髄のアライメントが良好となった。背柱管を狭窄するさまざまな前後要素による脊髄の圧排が解除され、脊髄刺激症状が減少することが画像的に証明され、これまでの臨床評価を裏付けるひとつの根拠となると考えられた。