2013.05.25 第86回日本整形外科学会学術総会

第86回日本整形外科学会学術総会
枕調節における睡眠姿勢改善の客観的評価
―寝返りのモーションキャプチャによる4D解析―

2013年5月25日(土)
第86回日本整形外科学会学術総会
場所: グリーンアリーナ広島

枕調節における睡眠姿勢改善の客観的評価―寝返りのモーションキャプチャによる4D解析―
山田朱織(16号整形外科 ),勝呂 徹(東邦大学整形外科),関口暁宜,石澤利晃,松尾芳樹, 浦上大輔, 井上亮文,星徹(東京工科大学コンピューターサイエンス学部),三上浩司(東京工科大学メディア学部),堀口悟史(慶應義塾大学大学院),井垣宏(大阪大学情報科学研究科)

【目的】われわれは、枕調節により夜間の睡眠姿勢調節を改善し、起床時のみならず日中の頚椎症や肩症状等の軽快を検証してきた。2万人以上の枕を目視によるSSS法で計測し、個体差に対応する技術精度を高めてきた。客観的に判断すべくモーションキャプチャ(Mocap)による4D解析を行い、寝返りを可視化し、至適枕の仮想体軸が静的睡眠姿勢に一致することを2010年本学会で発表した。今回は寝返りのスムーズさをMocapデータから求めた速度、加速度および周波数スペクトルを解析し睡眠姿勢改善を評価した。

【対象と方法】対象は17名(男9名、女8名)、平均年齢21.9歳であった。枕は至適、低、高の3条件、敷物は硬、柔の2条件とし、3回転の寝返りを実施した。37個の光学式マーカーを装着しMocapシステムVicon8で約40秒間ずつ撮影し、マーカー軌跡を4D座標(x,y,z,t)で取得した。数値解析により可視化した速度と加速度から寝返りのスムーズさの特徴を分析した。4D座標データのフーリエ変換(FFT)により周波数スペクトル分析を行い、0-15Hzの全帯域において低周波数成分を求めることで、寝返りのスムーズさの定量比較を行った。

【結果】低枕で敷物が柔らかいなど寝返りの悪条件において、目視で寝返りがスムーズでないと判断しているフェーズに一致して、速度・加速度の周波数成分が1.5Hz以上で増加傾向が見られた。FFT処理で定量化結果、1例を除く16例において(悪条件での徐派比)/(良条件での徐派比)の値は0.738-0.984(平均0.874)で1より小となった。周波数スペクトルの累積分布曲線においても、悪条件の曲線が良条件の曲線より全帯域で下方表示となった。

【考察】周波数スペクトルの徐派比とスペクトル累積分布曲線から、寝返りのスムーズさは良し悪しを定量的に判定でき、枕調節により睡眠姿勢を決定する重要な要素である寝返りの客観的な評価方法となりうることが示唆された。