2007年 第80回 日本整形外科学会学術総会 発表 抄録
枕治療のEBM を目指して―疾患別枕調節のポイント―


山田朱織1)、熊谷日出丸1)、勝呂徹2)

【目的】
頚椎疾患や姿勢異常の治療として睡眠中の寝姿勢 は重要で適切な枕の使用が求められる。疾患や体格ごとの 至適枕は異なり調節は不可欠である。治療法として枕のエ ビデンスは確立されていない。今回、頚椎捻挫、関節リウ マチ(RA)、円背の頸部症状への影響を知る目的で枕調節 法、効果判定、画像評価、疾患別枕調節を検討する。

【対象・方法】
対象は3 疾患、A群:頚椎捻挫33 例、平均年齢46.5 歳、 観察期間22.1 週、B 群:RA43 例、59.7 歳、13.6 週、C 群: 姿勢異常(円背)50 例、77.1 歳、23.4 週で、当院で考案 したSet-up for Spinal Sleep 法(以下SSS 法)で枕を調節 し、至適枕とした。SSS 法は、側臥位で頭部~体幹の中心 線が臥床面に水平、仰臥位で頚椎傾斜角が15 度前後とす る方法で寝返りを容易にする。評価はPillow Score(以下 PS)を用い、画像評価としてX-P とMRI で至適枕の頚椎 アライメントを検討した。

【結果】
PS は、調整前A 群23.4 点、B 群27.3 点、C 群 26.5 点が調整後36.6 点(改善率61.6 %)、35 点(43.5% )、 36.8 点(55.7% )、自覚症状63.4 %、48.4% 、77.8% 、他 覚所見41.5 %、29.8% 、45.7% 、ADL は68.6 %、52.6% 、55.1% 、満足度83.3 %、69.0 %、92.3 %であった。総合 とADL は頚椎捻挫、自他覚所見は円背、満足度はいずれ も高かった。SSS 法で至適枕調節を行うとPS は有意に改 善(P<0.0001)した。至適枕の傾斜角はA 群14.2 °,B 群 14.6 °,C 群11.8 °(拘縮性8.8 °, 非拘縮性16.8 °)、MRI は 3群とも椎体アライメントが良好、障害部のsubarachnoid space が開大傾向にあった。頚椎捻挫の疼痛を軽減しADL を改善した。RA の寝返り時疼痛は93 %軽快し熟睡感を得 た。円背の92.3% は寝返りが容易になり中途覚醒が減少し た。

【考察】
睡眠により頸部筋緊張は回復するが、不適切な枕 では安静のみでなくダイナミックな寝返りも困難である。 SSS 法に基づく至適枕の調整は、睡眠時の関節、軟部組織、 神経を回復させると考えられた。仰臥位頚椎傾斜角は、平 均15.2 °に近似することから至適睡眠時頸椎アライメント と推察された。

成瀬整形外科+マクラセンター1)、東邦大整形2)