2006年 第55回東日本整形災害外科学会  発表 抄録
睡眠中の肩こり治療―エビデンスに基づく枕調節法を用いて―

The therapy of neck, shoulder pain and stiffness by the evidence based
adjusted Pillow.-



【目的】
肩こりは、原因不詳の所謂肩こりと、原因が明らかな症候性肩こりがある。いずれも睡眠中の頚椎の安静と負担のない寝返りが重要と考える。しかし体格や疾患を考慮した適切な枕の調整方法は確立されていない。不適切な枕は起床時から肩こり他症状を来たす。我々は症候性の肩こりの枕を、SSS法で調節し肩こりの改善を評価した。更に単純X-Pで、睡眠中に症状を改善する頚椎の至適角度を検討した。

【対象・方法】
対象は症候性の肩こりで、3疾患に分類した。A群:交通事故の頚椎捻挫25例、平均年齢45.9歳、観察期間20.5週、B群:関節リウマチ43例、59.7歳、13.6週、C群:姿勢異常(円背)50例、77.1歳、23.4週である。夜間使用する枕をアンケート調査した。頚部症状は日整会治療成績判定基準を改変したPillow Score(以下PS)で評価した。PSは、肩こり、頭痛、起床時の不快症状、寝違え、寝返り等を含む症状を問診、自覚他覚所見、満足度等総合的に評価した。SSS法は側臥位で頭部と体幹の中心線が臥床面に水平、仰臥位で仰臥位頚椎傾斜角が15°前後となる枕調節法である。

【結果】
調節前の枕は羽毛、低反発ウレタン、ソバガラの順で、タオル等で自作する症例もあったが、いずれも高さや硬さを選択する基準はない。PS45点満点で、枕調整前平均はA群23.6点、B群27.3点、C群26.5点が調整後A群35.9点(改善率57.5%)、B群35点(43.5%)、C群36.8点(55.7%)と改善した。項目別改善率は、自覚症状A群62.8%、48.4%、C群77.8%、他覚所見A群42.1%、B群29.8%、C群45.7%、ADLはA群64.2%、B群52.6%、C群55.1%、満足度A群74.1%、B群69.0 %、C群92.3 %であった。至適枕の仰臥位頚椎傾斜角はA群13.8、B群14.6°、C群11.8°(拘縮性8.8°、非拘縮性16.8°)だった。

【考察】
脊椎動物における睡眠中の寝返りの意義は解明されていない。しかし今回の結果から、SSS法で寝返りが容易になる枕を調節すると肩こりが改善した。睡眠中に頚椎は、安静のみでなくダイナミックな寝返り動作により関節、軟部組織、神経など組織を回復させ、頚椎のリアライメントを促すと考えられた。仰臥位頚椎傾斜角は、非症候例の平均値15.2°に近似した。疾患別差異は、平均年齢と体格特異性を反映すると考えられた。その傾向を念頭におき、厳密な枕の調節及び再調整が重要と考えられた。