2005年 東日本整形災害外科学会 発表 抄録1
頚椎病変を有する関節リウマチに対する睡眠中の枕調節法


【目的】
関節リウマチ(以下RA)患者の睡眠状況を調査した。環軸椎亜脱臼や中下位頚椎病変など頚椎病変を有するRAにおいて、不適切な枕の使用によるさまざまな睡眠障害を認めた。我々は枕の調節法(以下SSS法)を用いて、臨床症状の改善と画像評価を行った。

【対象および方法】
対象は頚椎病変を有するRA43例(環軸椎亜脱臼38例、中下位頚椎病変21例)、女性41例、男性2例、年齢は31 ~81 歳平均59.7歳。経過観察期間は8.5~34週平均13.6週、枕調節回数は2~7回平均3.2回であった。SSS法は、枕の高さ決定と寝返り動作による頚椎の不安定性を防止する方法である。高さは、側臥位において頭部と体幹の中心線が臥床面に水平になり、同時に仰臥位における頚椎傾斜角を15度前後とする。単純X線で頚椎側面像を撮影し、環軸椎亜脱臼および中下位頚椎アライメントを確認した。頚部症状について日整会腰痛治療成績判定基準を改変したPillow Score(以下PS),Visual Analog Scale (以下VAS),Face Scale(以下FS)を試行した。

【結果】
43例中41例(95.3%)が、睡眠中の疼痛ほか夜間症状等を認めた。寝具の不適合が原因と自覚しているもの12例(27.9%)あった。症状は起床時の首のこわばり、頚部痛、肩および肩周囲の痛み、頭痛、不眠感等であった。夜中に寝返りができない、寝返りで疼痛を訴えた36例(83.7%)中、枕の調節により93%が寝返り容易となり熟睡感が増した。PS は使用前平均27.3点が使用後平均35点(P<0.001)、改善率は43.5%であった。自覚症状5.9点から7.4点、改善率48.4%、他覚所見4.8点から6.3 点、改善率29.8%、ADL9.3点から12.8点、改善率52.6%、満足度0.6点から1.6点、改善率69.0 %(全てP<0.001)であった。VASは4.7から2.8(P<0.001)改善率35.8%、FSは10.7から7.8(P<0.001) )改善率30.6%と有意に改善していた。調節した枕における仰臥位頚椎傾斜角は5~22°平均14.6°であった。角度とPS改善度との間には相関は認めなかった。

【考察】
SSS 法を用いて枕の調節を行うことで、PS、VAS、FSは有意に改善した。単純X-Pでは、適切な枕の高さにおいてADIの開大は認めず、中下位頚椎のアライメントが良好に保たれることを確認した。頚椎病変を有するRAは、適切な枕を使用することで頚椎が安定し炎症が抑制されること、同時にダイナミックな寝返りができると頚椎のリアライメントが起こり症状が改善すると考えられた。