2005年 東日本整形災害外科学会 発表 抄録2
円背の睡眠障害と枕の高さ調節による症状改善の評価


【目的】
脊柱の彎曲異常による病的姿勢は日常生活に様々な支障を引き起こす。我々は高齢者の骨粗鬆症に基づく円背の睡眠障害に着目し、夜間使用する枕の高さをSSS法にて調節し症状改善を評価した。

【対象および方法】
対象は円背38例、男5例女33例、年齢は65歳~88歳平均77.1歳。仰臥位において胸椎が伸展を示した非拘縮性円背が31例、胸椎が伸展せず頚椎が代償性に過伸展した拘縮性円背7例であった。観察期間は1~42週平均17.9週。SSS法は側臥位で頭部と体幹の中心線が臥床面に水平、仰臥位で頚椎傾斜角を15度前後とする枕の高さ調節法である。単純X線で頚胸椎側面像を撮影し胸椎の後弯と頚椎の前傾角をみた。頚部症状の評価は日整会治療成績判定基準を改変したPillow Score(以下PS)を用い、又睡眠に対する愁訴の改善をアンケート調査した。

【結果】
PSは45点満点で、枕調整前平均25点が調整後平均36点(P<0.001)、改善率50%であった。自覚症状5.9点から8.0点、改善率68.8%、他覚所見6.6点から8.4 点、改善率52.9%、ADL7.7点から12点、改善率51.8%、満足度0.5点から1.9点、改善率93.3 %(全てP<0.001)であった。睡眠に関する愁訴で多いのは寝返りし難い、熟睡感がない、夜中に目覚めトイレに何度もいく、いびき等であった。不適切な枕による起床時不快症状は、肩こり、頭痛、手のシビレがある。アンケート結果は、寝返り28例中26例改善92.9%、不眠25例中24例改善96%、トイレ回数は6回が1回になった例もあり平均3.5回が1.4回に減少した。起床時の症状は肩こり28例中26例改善92.9%、頭痛16例中15例改善93.8%、手のシビレ14例中12例改善85.7%と有意に改善していた。調節した枕における仰臥位頚椎傾斜角は5~25°平均14.4°であった。

【考察】
SSS法を用いて2284例の枕の高さを計測し体格の相関を調べた。非円背男949例で身長と枕の高さは相関係数(以下R2)R2=0.8119、体重と枕の高さはR2=0.8984、非円背女1205例で身長と枕はR2=0.8421、体重と枕はR2=0.7378と高い相関を示した。一方円背130例中男38例、女92例は体格と枕の高さに相関関係は認めなかった。これより円背は体格から枕の高さの推定は困難で、SSS法を用いて厳密な調節が重要である。本法によりPSおよび睡眠に関する愁訴が改善した。円背において適切な枕で寝返りを打ち熟睡を得ることは、日常生活を改善する重要な問題と考えられた。